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もてない人間の雑記帳・ゆるく断捨離中

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『しろいろの街の、その骨の体温の』感想  

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)
しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)

村田沙耶香さんの『しろいろの街の、その骨の体温の』を読んだ。
衝撃がすごすぎて、自分自身のことと絡めつつしばらくこの本のことを考えてしまった。
以下ネタバレ含む感想。
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角田光代『愛がなんだ』読了  

最近続けて角田光代さんの小説を読んでいる。
歌人の枡野浩一さんのポッドキャストで角田さんの本の話が出たことをきっかけに読み始めた。
一部ツイッターに書きなぐった文章と重なるけどちゃんと感想文を書いておくことにする。

愛がなんだ (ダ・ヴィンチ・ブックス)
愛がなんだ (ダ・ヴィンチ・ブックス)

『愛がなんだ』は28歳会社員のテルコがとある集まりで知り合った田中守通称マモちゃんに惚れぬいてでも都合のいい女におさまり続けていてマモちゃんには他に好きな女ができて…という話。
テルコは生活というか生命活動の中心がマモちゃん一色になってしまって大人としてどうかと思うような行動をしてしかしそれは自覚してるけど直すつもりはなくて、他人に指摘されようとも絶対に変えることはない。
本当に本当にどうしようもないんだけど、この主人公と私自身は実は紙一重かもしれなくて、かなり微妙な針の触れ幅で自分がそっちに行ってしまう可能性なんて存分にあるように思えてきて、自分がこうならないと信じて彼女の行動を批判するなんてどうしてできようかと思う。
そう考えると恐ろしいものがある。
現に一人の人間のことが頭にこびりついてひとときも取れなくて自分はどうかしているなと思うことがあるからだ。

好きとか執着とか純粋とかわからないけど湧いて出る感情というのはたしかにあって、他人から見たらひどく滑稽だったり常軌を逸してたりするんだけどそんなのどうでもいい、気にもならないと自然に感じているときの状態こそ我々が普段社会生活の中で押し込められてるものの正体だと思う。
皆そういう部分を理性で無意識に圧し殺して生きている。
一生発症しないから気が付かないという人が殆どだと思うけど。

こんなことしたらかっこ悪いとか思ってるうちはまだまだ尻が青いんだなーと思った。
テルコのように本来好きとか嫌いとかに恥や外聞は介入してこないものなのだ。
でもそれも度を越すとテルコのように相手や周りの人にけっこう迷惑をかける。
そこの調節機能がもうバカになっているというか機能としてついてないのがテルコという人間だ。

ただまあ、テルコがやってる事っていうのは私が思うに恋愛ではない。
別にうまくもないけど頭の中に浮かんだイメージとしてツイッターにも書いたんだけど、こうおにぎりを握るように徐々に形を整えて相手との関係を作り上げていく過程のことを恋愛と言うのなら、テルコのそれは米も具もぐっちゃぐちゃに相手に投げつける感じ。

テルコの男バージョンとも言える登場人物がいて、その男はテルコの友達に片思いをしてるんだけど、やがてそれをあきらめようとする。

P208 ナカハラくんはおそらく、交際もできないのに葉子を好きでいること、好きでいて、あれこれと彼女の欲求を満たしてやることに疲れたのでは、けっしてないだろうと思った。たぶん、自分自身に怖じ気づいたんだろう。自分のなかの、彼女を好きだと思う気持ち、何かしてあげたいという願望、一緒にいたいという執着、そのそべてに果てがないことに気づいて、こわくなったんだろう。

また、物語の終盤ではこう締めくくっている。

P217 マモちゃんの恋人ならばよかった。(略)いつか終わる片恋ならよかった。いっそストーカーと分類されればよかった。幾度も私はそう思ったけれど、私はそのどれでもなくどれにもなり得ず、そうして、私とマモちゃんの関係は言葉にならない。(略)だったらどこにもサンプルのない関係を私がつくっていくしかない。

こうしてテルコはマモちゃんとの関係を終わりにできない。終わりとかハナからないのだ。
テルコの人生が急に終わらないのと同じように、それに付随したこれも終わる終わらないの話ではない。
「愛」と一言で片づけられたら、恋人とか片思いとか言うように形や名前を与えてしまったらどんなに楽か、そのあまりの複雑さ、説明できなさが『愛がなんだ』という一言に集約されているのだと思う。

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津村記久子「ウエストウイング」再読  

ウエストウイング
ウエストウイング

年末年始、津村記久子さんのウエストウイングを再読した。
店や会社などのいろいろな店子の入ったビルを舞台にした群像劇。
ビルに出入りする年齢性別も違う人々があるきっかけでつながっていくという話。
驚いたことに登場人物はほぼビルから出ていない。
それでもいろいろなことが起こるし、それがいちいち面白い。
なんというか、細かいディティールが。
架空のビルなのに「ありそう、ありそう」もしくは「あったら楽しそう」と思わせてしまうすごさ。

津村さんの小説には、人と人とが些細なきっかけでゆるく繋がる様子がよく描かれていて、それをいつも羨ましく思う。
つながるってよく聞く言葉だけど、携帯会社のCMで聞くようなわざとらしい「繋がる」でもなければ、現代社会の闇!繋がりたい若者!みたいなものではなく、ただそこにいるから、生活圏が同じだから、たまたま人生の通り道が交差したからなどの理由で生まれるやりとりに心が和む。
一言で言えば「隣人感」。
津村さんの本を読むと私も誰かにとってよき隣人でありたいと思うのだ。
必要以上に気も使わないし、かと言って冷たくもない、ほどよい温度感って昨今なかなか得られるものではないからだ。
私もこんなことを言いつつ、まったくの他人と言葉を交わすということはほとんどない。どちらかもしくは双方が仕事の最中であるという状態を除いては。(例:接客、会社の来客など)
自分でも知らない人となんでもない話をしたいのかしたくないのかわからない。
でも、話しかけたいときに話しかけるのが自然な状態なのかなとも思う。
電車で自分もよく行く店の袋を下げている人に「何買ったんですか?」とか、ipodの画面がちらっと見えてしまった時に「そのバンドかっこいいですよね」とか…
そういうのを直接出さずツイッターに書いてしまうのが、元来シャイな気質な上に現代という時代を生きてしまっている日本人の哀しさなのかもしれない。
わからないけど、関西というか大阪のほうが知らない人に話しかける文化というのは色濃いのだろうか。

ラストシーンを頭の中でつい映像で思い浮かべてしまって、晴れた日の空まで見えるような気がしてとても平和な映像だったので、こういう平坦な毎日の中にある決して劇的ではない平和を噛みしめて生きたいものだと思った。
でも難しい。本当に。生きるって大変なんだよ、働くって特に。
そういう時、津村さんの小説を読むと少し心が晴れるのです。

そういえば1月4日に仕事初めをして「ワーカーズ・ダイジェスト」を読みたくなった。
なぜかは読めばわかります。

さらに余談だけど、ウイング=翼というのでルーブル美術館を思い出した。ドノン翼、リシュリュー翼、シュリー翼。
いつもどれか一つを忘れる。

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津村記久子『真夜中をさまようゲームブック』  

美術手帖2015年10月号、春画特集の号の津村さんの小説「真夜中をさまようゲームブック」をやっと読めた。



中はこんな感じ。


ゲームブックって、私はたぶん世代でないんだけど、1冊だけポケモンのを持っていた記憶がある。
各パラグラフに行動の選択肢がいくつか用意されていて、それを順に辿ってエンディングを目指すというもの。
「真夜中をさまようゲームブック」は、主人公が深夜家に帰れなくなるところからはじまる。
これがまた面白い。
いろんな場所へ行ったり、アイテムを手に入れたり、最も面白いのは、「死にエンド」の多さ。
全62パラグラフ中、ゲームオーバーは15パラグラフもある。
私もゴールを目指しながら何度本を閉じよと命じられたことか…
しかもそのゲームオーバーのなり方がいちいち面白い。
一つの行動にこだわりすぎてゲームオーバーを迎えたときに、
「君は依怙地な人間だと言われたことはないか」
という文を目にしたときはもう笑ってしまった。

私はゲームブックには詳しくないけど、とてもよくできている。
しかも途中失敗してもちゃんと物語の真相がわかるエンドに連れて行ってもらえるのも良心的。
ちなみにプレイヤーが男女どちらでもいいように配慮されている。
私は男性のつもりで読んだけど、誰でも主人公になって真夜中をさまよえます。
架空の世界でなく、日常世界がゲームブックの舞台になっているけど、結構楽しめるもんだなと思った。

一応フローチャートを作ったけど、自分にしかわからないくらい汚くなりすぎたのでアップはやめておく。
絶対通るところだけ選んでいけば最短ルートでゴールできるけど、途中自分の判断でなく運試しで進むようなところもあるので、エンディングを迎えるのにそれなりに苦労すると思う。

津村さんはゲームブックにも造詣があったんだなあ。

ところで本編は春画特集だったわけだけど、普通に女性向け大人の玩具の宣伝と言うか記事が載っていて驚いた。
春画は…なんかものすごい世界だよな。
女の人の方が抵抗なく見られるっていうけどうーん現代の女性はきれいなものの方が好きだろうな。
これは昔のものだからこそ受け入れられるというか。

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tag: 書籍  津村記久子 
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図書館考  

図書館へよく行く。
主に家の近所のものと、職場近くの2館を行き来している。
職場の方はその区へ在勤していればカードが作れるということだった。
たぶんどこの図書館もそうなんだと思う。

家の近所で予約が果てしないと思っていた本が、職場のほうで普通に書架に並んでいた。
この差はなんだろうと気になって調べてみた。

雑な計算だけど、市区町村の人口÷図書館数を算出すると、
私の住んでいる市ではおよそ5万3000人に1館
職場のある区では4万4000人に1館
の割合で図書館があることが分かった。
つまり、同じ図書館を5万人でシェアするか4万人かの違いでその差は1万人くらいなんだけど、たかが1万人の競争率の違いでこれだけ新しい本の借りやすさに差が出るだろうか。
そもそも人口の全員が図書館を利用するわけではない。

ちなみに、職場の近くの図書館では「新しく入った本」のコーナーが全然スカスカになっていないことに衝撃を受けた。
うちの近所の図書館では「新しい本」のコーナーで、学術書・専門書のように難しそうなもの以外で今年出た本というのを目にすることはまずない。光の速さで貸出されてしまっているからだ。

そもそも計算がおおざっぱすぎるので、もっと人口ピラミッド的なものだとか、図書館を利用するのはどういう人々か、またそういう人々がそれぞれの自治体にどのくらいの割合で住んでいるのか、果ては書店の数や収入とかこういう文化的なものにかけるお金の割合などを加味しないと正しいデータは導き出せない。
と、思うのは最近統計の本を読んだからであって、お、私数学が極端にできないと思ってたけど意外と理解できるじゃんと調子に乗って少し発展した(でも高校生でも読める)本を手に取ったら即挫折した。
頭が悪すぎて落ち込む。

もうひとつ、最近読んだ本。
「役に立たない」と思う本こそ買え
「役に立たない」と思う本こそ買え

お天気キャスターの森田さんの本。
読書礼賛的な内容で、私は別に本なんて読みたい人が読めばいいと思うけど、なるほどと思うことは結構あった。
ひとつは、どれだけコンピューターが発達しても人間には最後まで「判断」という仕事が残るということ。
さっきの図書館の数を例にとると、1万人という数字は確かにデータとしてあるけど、この数字は果たして信憑性があるかとか、このようにして更なる調査が必要だとか、そういう判断は人間にしか下せないということだ。
気象予報士なんていうのは森田さんの言うことがたしかであると証明できる仕事の最たるもので、それを羨ましいと思う。

もうひとつは、明治神宮の森が完全なる人工林で、森が枯れないように叡智を集結して作り上げたばかりでなく、200年後に自然のサイクルとして森が続いていくように考え抜かれているということだ。
知らなかった。昔の人すごい。
最近あれやこれやと建物を作ったりしてるけど、未来のことをちゃんと考えているのかは疑わしいし、それを漠然と不安に思う。
それは常々感じているんだけど、今こそこの明治神宮の森に倣うべきではないのか。

などと、大した仕事もしてないほぼ社内ニートのダメ社会人は日々思っているわけです。


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『捨てる女』読了  

捨てる女
捨てる女

内澤旬子さんという人の『捨てる女』というエッセイを読んだことにより、自分も物を減らさなくてはと思った。
エッセイは病気を機にどういう訳か物の多い部屋が耐えられなくなり物を減らしまくった一部始終が描かれていた。
「夫まで断捨離!?」みたいな煽りがついてるけど、この件に関してはメインではない。
というか、成行き上そうなったってだけの話で、著者もそこに食いついてほしいわけではないと思う。
以下ツイッターに書いた感想コピペ(一番下から読む)

・死んだらゴミの山が残るとかどう考えても怖い

・そうじゃなきゃ人類は近い未来に心中を余儀なくされるな火星に移住とか言う前に

・これから生きる全人類に共通する課題は「後先を考える」ことだと思う
個人でも国でも世界でも

・この国の豊かさについて思う
豊かすぎて怖くなる感覚ってあるよな
大きい店とか都会とか行くと豊かだけど破滅寸前感があっていつも恐ろしくなる
イメージ的に地震が起きる前のプレートの沈み込み状態みたいな
その恩恵で便利な暮らしができてるんだけど

・興味深かったのは、物を手放しまくって後悔と言うか、あのときは異常だったなどという気持ちも著者の中にあることだ
鬱が押し寄せてきたとか
執着からの解脱で身も心もスッキリというのはやっぱり断捨離教って感じだよな

本に感化されて捨て活動をした話に続く。

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2015年1~2月読書感想  

最近読んだ本の記録。
今年の読書目標は100冊だけど、そうすると月に8~9冊読まなくてはならないことになって結構厳しい。

新世界より(上) (講談社文庫)
新世界より(上) (講談社文庫)

貴志祐介『新世界より』
貴志祐介によるファンタジー方面というか舞台が現実世界でない方面の話。
文庫だと上中下の大作で、読み応えはあって展開は面白いんだけど、自分自身ファンタジーがあまり得意でないせいか(想像力が欠如してるからだと思う)最後まで入り込めずに終わった。
この世界では人間が呪力という謂わば魔法の力を有してるんだけど、それがしっくり来なかった。
いつまで非実在の生き物の話が続くんだろうと思っていたら最後までそれだった。
人と人が殺し合う…みたいなのを想像していたら着地点が違ったから入り込めなかったのかもしれない。
ただ、人間の身勝手さとか物語の根底にあるものはなんとなく感じ取ることができた。
私の好きな『天使の囀り』『クリムゾンの迷宮』『黒い家』あたりの貴志祐介ワールドとはかなり軸を変えている作品だった。

プリティが多すぎる
プリティが多すぎる

大崎梢『プリティが多すぎる』
文芸誌志望の若き編集者がローティーン誌の編集部に配属されて東奔西走する話。
ところどころ登場人物によって仕事論のようなものが語られていて、その通りだなと思うと同時にそんなに仕事に対して真っ向から対峙できない自分がみじめに思える。
クリエイティブな仕事への劣等感が消えない。
何もかもがどこまでもエネルギーに満ちた出版の世界、こういう場所で切磋琢磨された人間はさぞかし充実した人生を送るのだろうという卑屈っぽい気持ちになってしまった。
物語自体は山あり谷ありの仕事小説で面白かった。


園芸少年
園芸少年

魚住直子『園芸少年』
先ほどの『プリティが多すぎる』と逆でタイトルから簡単に内容が推し量れるので読もうと思った。
久しぶりにいい小説を読んだ。
タイプの違う男子高校生3人がふとしたきっかけで園芸に勤しむことになる話。
恋愛の出てこない青春小説は好きだ。
男子高校生の友情に夢をもってしまうけど(変な意味でなく)やはり小説世界だけの話なのかな。
それぞれが自分の意思をもって考えて動く所とか、決して流されて生きているわけではないことに頼もしさを感じた。
園芸が3人を結び付けているけど、性格も背景も三者三様で、それぞれがそれぞれの抱える事象に向き合い、たまには互いの存在が前に進む力になるけどその干渉のしすぎなさとか、友達ってそういうものだよねという人間関係の在り方についても胸に残るものがあった。

本を読んでいると、その他の考え事を一時的にうっちゃれるのがいい。
そういう風にしていかに考えたくないことを考える余地を作らないかがうまく生きるポイントだと思う。
最近は本当に駄目すぎるのでもっと楽に生きたい。

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『本を読む人のための書体入門』読了  

本を読む人のための書体入門 (星海社新書)
本を読む人のための書体入門 (星海社新書)
正木香子『本を読む人のための書体入門』を読んだ。
なぜこの本を手に取ったかというと、普段とくに文庫本を読むときに、1ページめをあけて、あ~このタイプか~と思うことがあるからだ。ちょっと苦手な書体というか。
なぜその書体を苦手と感じるかというと、妙に明朝体が太くて、必要以上にすべてが協調された感じがするのと、これは完全なイメージの問題だけど、翻訳文じゃないのに翻訳文のように感じてしまって物語と自分との間に距離を感じてしまうのだ。
逆に言うと、翻訳文でその何書体だか知らないけど妙に明朝体が太い書体を見る分にはかえってしっくりくるというか読みにくいという印象は抱かないんだよね。
それが常々不思議だと思っていたので、何かヒントが見つかりそうだと思って読んでみたのがこの本。
星海社新書ってあまりなじみがないけど、たぶん若者向けというか次世代向けの少し新しい切り口の新書を出すことを目標にしてるんだと思う。
高校生やふつうの大学生の思考訓練用と言うか。
別に私だって社会人だし社会人が読んだってもちろんOKなんだけど。
昔からの新書読みの人からしたら邪道なのかもと思ったりする。まあ歴史を重ねていけば。

私たちは文字を読みながら、実は「書く」ことを仮想体験しているのです。

作中で筆者はこんなことを言っていた。
個人的にはこんなこと思ったこともなかったけれど、だとすれば「なぞりやすさ」の面で書体によってしっくりくる・こないがあることに説明がつく。
そしてしっくりくるこないの判断基準というか、その根拠とはと言うと、

私が好きな書体とは、初めて見た瞬間に、すでに出会ったことがある、と感じさせる文字なのかなという気がしています。

人は何かに強く惹かれるとき、まったく初めて見るものであっても、いつかどこかで見た府警だと感じているような気がするのです。

との考えを正木さんは示している。
これは文字に限ったことではなく、他のさまざまな事柄に関して言えることだと思う。
直感的に安心感をおぼえるのか、向こうから自分に寄り添ってくるような感じがするのだと思う。
そして、このような感覚は、文字を「平面」ではなく「空間」の体験としている故であると筆者は続けている。
簡単に言えば文字というものに、言葉や文章そのままの意味の他にもっと奥行きのある情報(印象・イメージ・自分の過去の体験など)を無意識に見出しているということだよね。
私が冒頭で言った翻訳文でないのに翻訳文に感じるというのは、翻訳のシリーズものを初めて読んだときに、たとえば大声の台詞がわざわざ書体を変えて大文字で書かれていたことに驚いたという経験に基づくものだと思う。
それが根強く残ってしまった。
その安易な印象操作?演出?がなんとなくはまらなくてそれ以来そのシリーズは読んでいないという話はまあどうでもいいんだけど…
とにかく、文字に空間性があるという一言に集約したことだけでもこの本の意義は大きいかなと思う。

ここから自分の話をさせてもらうと、私は書き文字にフェチを持っていて、記入済みのほぼ日手帳やモレスキンの写真がばーっと載っているウェブサイトを見るのが好きなんだけど、結局字でその人の人間性まで勝手に想像している部分がある。
字がうまい!頭よさそう!品行方正そう!素敵!みたいな。
ラブレター詐欺とかあったら引っかかると思う。
字から人となりを判断するというのの逆パターンで、この人にこの文字ありという考察もよくしている。
会社で人の書き文字を見ていて、この迷いのない筆の運びは他人の目を気にして縮こまっている私の字とはまるで違う…とか、この筆圧と全部の字がつながっている勢いはこの人の向う見ずな性格そのものだ…とか、この妙に整えようと頑張っているのが隠しきれてない字はそのまま学生時代やんちゃだったけど今社会人としてそれをひた隠しにしているのだな…(((だって待ち受けにしてる昔の写真ヤンキーじゃん)))とか結構失礼な人間観察をしてることが多々ある。
でもこれっておそらく多くの人が無意識にやっていることであって、字にイメージを見出さない人っているのかなと思う。
書体にしたって同じことが言えて、日本語が書体に富んでいるのか、他言語にも書体はたくさんあるけど印象が書体によって左右されやすいのが日本語なのか知らないけれど、日本語の利用者でよかったなと思う。
「空気」や「文脈」がものを言う文化なのともつながってくる話だと思うけど長くなるからやめる。

文字へのこだわりといえば、このブログもメイリオというフォントに設定してあるけど、これも一応こだわってやっている。
もし私がもっとお堅い評論ブログをやっていたとしたら、絶対に文字もお堅くする。
でもこれってさっきの話じゃないけど、研究者がまさかギャル文字みたいなフォントで論文を出さないのと一緒で、「その文章なり言葉なりをどう読まれたいか」という気持ちをフォントに込めているんだと思う。
就活ではスーツを着てそれ用の化粧をし、合コンでは勝負服を着てそれ用の化粧をするのに似ている。
合コン行ったことないけど。

にしても、ツイッターにも書いたけど、活版印刷が普及するまで文字はほぼ音読されるためのものだったっていうの、現代の我々には想像もつかないよね。
文書化された文字は楽譜みたいなものだったという質問サイトの回答を見て納得した。
ツイッターとか見ていても思うけど、日本人は老いも若きも文字大好きなんだなと思う。
あまりに自然に使いこなしてるから自覚がないんだろうけど。

まとまってないけどこんなところで終わりにします。

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簡易読書感想  

いや、暑い。暑すぎる。
地球がおかしい。
引きこもっていたが、クーラーがないので死にかけた。
でも外に出る元気もない。
そんな中読み終わった本。

婚礼、葬礼、その他
婚礼、葬礼、その他
津村記久子『婚礼、葬礼、その他』
最近本当にこの作家さんが好きだ。
この話も、主人公のキャラクターがとても好き。
突然上司の親族の葬式に呼ばれて出向いていったら、会社の人がみんないて、なんで?休みだよ?と行き場のない怒りと言うかなんと言うかを抱える主人公に共感をおぼえた。
会社の人々がどうも人間として正しすぎてきな臭いというか、もっと皆自分のために生きてくれないとこっちもそれがしづらくて迷惑みたいな気持ちはとても身に覚えがある。

ふたつめの月 (文春文庫)
ふたつめの月 (文春文庫)
近藤史恵『ふたつめの月』
主人公と微妙な関係の男の子と、ミステリとしての部分、その両方が非常にうまく組み合わさっていて、読み物としてとても楽しかった。
その男の子との関係にも感情移入したりしなかったり。
いや、後半は完全に置いて行かれましたけどね。


三つの名を持つ犬 (徳間文庫)
三つの名を持つ犬 (徳間文庫)
同じく近藤史恵『三つの名前を持つ犬』
同じ作者の同じく犬が出てくるストーリーとして、テイストが似てるかもと思って読んでみたら、こちらは扱っているテーマが重かった。
でもミステリ好きなのでとても好み。
男が女に惚れる過程はちょっと理解しかねたけど、どうなるのどうなるのとページを繰らされてしまった。
人物模様とか、前後半で視点が切り替わるんだけど、後半の主人公の葛藤とか人間の汚さとか、そういうものに突き動かされて読み切った感じだ。

近藤史恵さんの他のミステリも読みたい。
図書館に行きたいがあまり時間がないなあ。

拍手ありがとうございます!

category: 読んだ(本)

tag: 書籍  津村記久子 
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最近読んだ中で、印象に残った本

津村記久子『ポトスライムの舟』
ポトスライムの舟 (講談社文庫)
ポトスライムの舟 (講談社文庫)
津村記久子さんの本は今まで何冊か読んで、それほどピンときたものがあった訳ではないんだけど、これはすんなり自分の中に入ってきた。
表題作の前日譚とおぼしき作品が後半に入っているんだけど、それも好き。
おそらく、自分と重なるんだと思う。
人から取るに足らない人間として扱われるような気がする人にはぜひ読んでほしい。
後半の話で主人公が受ける扱いには本当に腹が立った。

河合隼雄『大人の友情』
大人の友情 (朝日文庫 か 23-8)
大人の友情 (朝日文庫 か 23-8)
友達ってなんだろうと思い悩みすぎて、書店で手に取ってしまった本。
学生を終え、無職からいつしか勤め人になって、別のことを学び直して未だ学生をやっている友達や、とくに何もしていない友達との距離を感じるようになった。
というよりは、自分が一方的に距離を感じているだけなのだと思う。
あまりにお気楽な彼女らの生活に妬ましさを感じ、でもお互い持ってるものと持ってないものはそれぞれあるしなと思い直したり。
価値観が合わなければもう友達ではいられなくなるのかとか、最近はそういうことばかり考えてしまっていた。
そんな中でこの本を読み、さんざん時間を使って思ったことは、「友達」というものにやたら意味を見出そうとするのはやめようということのみ。
なんかもう仕方がないのだ。歳をとることも、環境が変わることも。
この本の中で作者が言っていた、
人間の感情には、激しさと深さという二側面があるように思う
という言葉はわかりやすくていい。
激しさは外から見てわかりやすいが深さはその逆である。
深さは見えにくい一方で他からの力によっては変え難いとのこと。
私はどちらかと言うと感情を超気味の悪い底なし沼のようにしてしまうタイプだと自分で思う。
健康的な深い感情を持てる人間になれれば幸せになれる気がする。

西加奈子『しずく』
しずく (光文社文庫)
しずく (光文社文庫)
短編集。テーマはどれも女ふたり。
木蓮という話が一番好きだ。恋人の子供(前妻との間にできた子)と馬が合わず…という話。
木蓮はちょうど今の季節だからというのもあるかもしれない。
ふっと何かが吹っ切れた瞬間に、押さえていた感情が暴発して止まらなくなる。
そんな主人公に羨ましさを感じたのかもしれない。
心がすっとした。

池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点』
自分では気づかない、ココロの盲点
自分では気づかない、ココロの盲点
たまには流行っている本も読む。
挿絵の部分がもったいない気がする。その分もっと解説にあててくれても…と思うけど、ライトな絵本風味の本にしたかったということだから作者としてはこれが正解なんだろうな。
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

この本を読んだ時のことを思い出したので、知識は新書等で補完するのがいいのかもしれない。
この「ココロの盲点」の最も注目すべきところは巻末の「認知バイアス用語集」だと思う。
思い当たるふしがありすぎて心が痛いこと必至。
人というのは、都合のいいように考えてしまう生き物なのだ…

暇をつぶすために本を読んでいるけど、別のこともしたい。

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