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貴志祐介『黒い家』読了

Sun.26.02.2012 0 comments
貴志祐介『黒い家』を数日かけて読んだ。
以下ネタバレ含む感想。 この作家さんの本は、『天使の囀り』だけ読んだことがあるんだけど、面白さはそちらより少し劣るかなという感じがした。
もっとも、デビュー作品だから書くほどに面白くなっているということかもしれないが。

保険会社勤務の主人公が、ある首吊り死体の発見者になってから(その前にも伏線はあったが)殺人鬼に狙われるという話。
この殺人鬼というのがまあ怖い。
物語に書かれているだけでもゆうに10人は殺している。
フィクションだけど、この世のどこかにいてもおかしくないと思わせる設定・人物のディティールがさすがだと思った。

この殺人鬼の正体は物語中盤で明かされるのだが、どうして気がつかなかったのだろうと悔しく思った。
結局自分も主人公と同じタイミングでその正体を知ることとなる。
ミスリードがあちこちに散りばめられているのですっかり思い込みの罠にはまってしまった。

この「真犯人はこちらが疑ってかかっていた人物ではなくその配偶者だったんだ!」という戦慄は野沢尚の『リミット』を読んだときを思い出した。
作品自体はこちらのほうが古いが。
あと、犯人との接近戦のハラハラ感も似ていると感じた。

本書は殺人鬼の怖ろしさ、狡猾さ、執拗さだけが書かれた本ではない。
主人公も本文で問いかけているように、世の中がモラル崩壊を起こしかけている現代において生命保険とは何なのかということ、また抗えない邪悪なものに蝕まれていくような不安などが描かれている。

世の中全体だけでなく、人間とはいかなるものかという点についても触れられている。
主人公の恋人は性悪説的なことは絶対に考えない人間だ。
そしてそれとは全く反対の考え方をする登場人物もいる。
この辺りをめぐる彼らの議論も物語の重要な要素だ。

主人公には、自分の行動が兄の自殺の原因の一端になっているという心の傷があったが、それが最後には解決する所がこの小説の救いである。
思い込みって怖い。
それが自分の中で「真実」だとしても、「事実」とは限らないという例だ。
そう考えれば我々も少しは希望を持って生きられるかなと思う。

やっぱりミステリーは読んでて楽しいな。
予想を裏切られたい。
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