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もてない人間の雑記帳・ゆるく断捨離中

西村賢太『苦役列車』読了  

「ログをとる」ということを推奨している世の中になりつつあるとラジオで聞いた。
スマートフォンやそれに類するアイテム、便利なアプリの数々…
エバーノートとかみんな使ってるもんね。
ほぼ日の大ヒットも「ログをとる」ということに関連していると思う。

私も「ログ」の一環として、読書メモノートをつけていたことを思い出した。
しばらく使ってなかったけどまた再開しようと思う。
手順としては、
「ブクログで読んだ本を管理→読書ノートに箇条書き等で思ったことをメモ→気が向いたらブログに読書感想を書く」
これがベストかなと思う。
たまに読書ノートの部分がツイッターになっちゃうんだけど。

さて、話題作を人より相当遅れて読みましたシリーズ(?)今回は西村賢太『苦役列車』を読んだ。


表現が下品だったりするので、嫌いな人は嫌いだろうなと思う。
個人的には文章は読みやすかった。
主人公の北町貫多が清々しいまでのクズ。(批判でなく)
この名前からして作者の名前のもじりだけど、どこまでが本当の話なんだろうという興味が読者の気を引いてるんだと思う。
クズなんだけど、自分のクズっぷりを必要以上に自覚し、卑下している、卑屈もここまでいくと鬱陶しいとか思わないんだなと思った。
自己内省型の文章というのは、どこか「そんな自分を認めて欲しいけど自信がない」というのがありありと透けて見えて、その葛藤がいわゆる「自虐風自慢」に表れていたりして何とも言えない気持ちになったりすることがある。
太宰の「人間失格」を読んだときがそれだった。
「俺ってこんなダメ人間なのにどういうわけか女にはモテちゃってさ~」と言っているような感じを覚えて、ああこういう人っているよなって思った。
北町貫多の場合は、「ええクズですよ底辺ですよだからエリート共をこき下ろすことで溜飲を下げてるんだよそれの何が悪い」って感じでいっそ気持ちがいい。
心のどこかでエリートを馬鹿にしている社会的弱者ってよくあるけど、この貫多という人物には卑しさを感じなかった。
おそらく彼自身が自分の立場も醜さもよく観察して考察して思考が一周しているからだと思う。
貫多とは育った環境も考え方もまったく異なる、心身ともに健康な若者である日下部という登場人物に最悪な態度をとってしまうシーンは、やめろやめろこっちがいたたまれなくなるとは思いつつも、健全な他者に卑屈をぶつけたくなる気持ちはわからないでもないと思った。
このシーンというかこの小説をただ不快と思う人がいるとすれば、それこそこの日下部やその彼女のような育ちの人なんだろうなと思う。後ろ暗いところがない人。
たまにいるよね。キラキラしすぎてて、こっちがそのオーラに焼かれて意味もなくこちらを消えてしまいたくなる気分にさせる人。
まあそういう人もそう見せているだけで本当に100%健全な人間なんていないんだろうなというのがだんだんわかってきたけど。
しかしこの日下部の彼女という人物のリアルさがすごい。
ほとんど出てこないのに、ありありと現実にいたらこんな人というのが目に浮かぶ。
使われまくって陳腐な表現だからあまり使いたくないけど「意識の高い大学生」だ。
きっとシューカツでセミナーとか行きまくって説明会の最前列でうんうん頷きながらノートとりまくって、質問コーナーで「本日は貴重なお話ありがとうございました、わたくし~~大学○○学部の…」って質問(しかも内容は福利厚生についてや男女比について)しはじめるタイプだ。
オシャレなカフェで自己分析ノートをびっしり埋め、その様子をスマホで撮ってSNSにすかさずアップ、休日は女子会で恋愛話に花を咲かせるに違いない。
途中から私が持つ女子学生のイメージになっちゃったけど(笑)

とにかく、貫多という人物が意外に嫌いになれなかったので最後まですらすら読めた。
芥川賞受賞の時に『乳と卵』の川上さんとよく対比されてニュースになってたのが納得できた。
川上さんの文章は最近よくある口語が句読点なく延々続く「脳内垂れ流し文」をあえて使っているから私にとっては少し読みにくかった。
頭の中で音読してしまうからなかなか進まなかった記憶がある。

余談だけど、私も日雇いの仕事で倉庫に出入りしていた時期があったので、貫多の仕事について少しは具体的にイメージできたのがよかった。
無職の時の食いつなぎでやってた仕事で、あまりいい思い出はなかったけど、どんな経験も案外無駄にならないもんだなと時を経て思った。

巻末の石原慎太郎氏の解説にもあったけど、今後彼の生活が変わることによって作品がどのように変わっていくのかということに私自身も興味がある。
あんまりメディアで過激発言?をするのはどうかと思うけどね…笑
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