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もてない人間の雑記帳・ゆるく断捨離中

西村賢太『暗渠の宿』読了  

西村賢太『暗渠の宿』を読み終えた。
以下ネタバレ
表題作と、『けがれなき酒のへど』の二編が収められている。

また西村賢太の本を手に取ってしまったと言うことは、前回『苦役列車』を読んで少なからずこの作家が気に入ってしまったふしがあるんだと思う。
自分で言うのもあれだけど、とくに女の人は好みが別れる作家だろうし、好きと声を大にして言いづらい面があるような気もしないでもない。
なにしろ彼の作品に出てくる主人公はことごとく下衆で、賎しくて、激昂しやすく、時には暴力まで持ち出したりする最低男なのだ。
でもそんな男の生き方が刺激の少ない生活の中で言いたいことも言えず大人しく暮らしている自分にとってはたまらなくおかしくて痛快でときに切ない。

『けがれなき酒のへど』は夜の仕事の女にまんまとだまされる話。
読み終わるとタイトルそのまんまだな~と妙に納得して、主人公の情けなさに笑えるやらやるせないやら。

『暗渠の宿』は女との同棲生活のよもやま話。
大きなドラマがあるわけでも、目に見える始まりや終わりがあるわけでもない、いわば山なし落ちなし意味なしの短編だけど、この中に題材の地味さと比べ物にならないくらいのあらゆる感情が次々と色を変えるように織り込まれている。
怒りが悲しみと言うか泣きたい気持ちに変わって、それがまた怒りに変わる…という誰しもが感じたことがあるであろう感情のサイクルが手に取るように描写されていて、読後妙な満足感をおぼえた。

この平成という何もかも人間さえもきれいに整って見えるような時代に、西村賢太が描く現実と非現実の狭間に存在する人物の話を読むことが愉快でたまらない。
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